スキャン代行業者の提訴について考えてみる (その1)
以前このブログの「自炊の森が閉店したことについて考えてみる」で著作権と自炊について書いていましたが、2011年12月20日に著名な作家・漫画家7人がスキャン代行業者をスキャン行為の差し止めを求めて提訴したことがわかりました。
(ITmedia 「東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図」)
訴訟の焦点は「自炊」行為自体ではなく「自炊代行」行為
詳細はITmediaの記事を読んでもらうとして、今回の訴訟で訴えられたのはユーザーから送られた書籍を裁断しスキャンしてデータを送り返す所謂自炊代行業者です。
原告の訴えの根拠となったのが著作権法の「著作物の私的使用を目的とする場合は、その使用する者が複製することができる」と言った部分。
自炊代行業者が”使用するもの”ではないため、著作権法違反ではないかというのです。
ここが1つ目のポイントで、今回の訴えは自炊代行の行為が著作権法に違反していると言うもので、ユーザーが自身で行う自炊行為自体は著作権法違反では無く、書籍を購入したユーザーの自炊行為は著作権法違反には問えないと原告側も認識してるのではないでしょうか。
海賊行為と自炊行為を一纏めにして問題にしている
「電子書籍については今まさにラインアップを充実させる過程にある。その健全な発展のためにも、例えばDRMの施されていないものが大量に不特定多数にわたる状況に一定のルールが必要」(弁護団の福井健策弁護士)
上記のように原告の弁護士が発言していますが、確かに自炊行為で作られた電子書籍はDRMが無いので容易に拡散が可能ですが、自炊=拡散というのはいささか無理があるのではないでしょうか。
ここが2つ目のポイントですが、そもそもこの訴訟はスキャン代行が著作権法違反に当たるという主張をしているのであり、「自炊行為で作られた電子書籍がDRM(著作権保護技術)が施されていないため不特定多数に出回るという話」はこの訴訟には全く関係の無い話です。
「電子書籍が普及しても、違法スキャン業者はなくならない」――東野圭吾
本当にそうでしょうか?
ネットに違法に流通させることを前提とした自炊(そのほとんどはユーザー自身で行う自炊でしょう)は無くならないと思いますが、電子書籍が普及していくことで少なくとも原告が違法と主張する自炊代行業というのは廃れていくと思われます。
なぜかというとそれはユーザーにかかる金銭的な負担が思いの外大きいからです。
500円のコミックを買って、それをスキャン代行業者に依頼して電子書籍化をしてもらう場合を考えてみます。
この場合かかる費用はコミック代500円とゆうめーる(昔の冊子小包)の往復送料180円×2、そして電子書籍料の100円がかかり、
500円 + 180円*2 + 100円 = 960円
になります。
なんと500円のコミックを買って電子書籍化しようとすると、もう少しでそのコミックがもう1冊買えてしまう料金が掛かることになります。
勿論一度に大量の書籍を送れば一冊あたりの送料が安くなるので、全部が全部約2倍という事ではないのですが、電子書籍化にはユーザーにそれなりの金銭負担がかかっていることは事実です。
これが最初から電子書籍で出版されていれば、ユーザーは余計なお金を使って自炊代行業者に電子書籍化を頼まずに済むわけで、電子書籍が適正な価格(適正な価格というのがどういったものかは後述)で提供されれば自炊代行業というのは廃れていきます。
つまり、「電子書籍化されないから自炊代行業者がいるわけで、電子書籍化されれば自炊代行業者は必要ない」ということです。
売ってないから盗むのか! こんな言い分は通らない--東野圭吾
「売ってないから盗むのか! こんな言い分は通らない。私は電子書籍が普及しても、こうした違法スキャン業者はなくならないと個人的に思っている」(東野氏)
いや、今回の訴訟では盗むとかは関係ありません。東野氏は自炊代行行為と海賊版問題を一緒にしています。
そうではなく今回の席ではこう言うべきでしょう。
「売ってないからスキャンするのか! こんな言い分は通らない。私は電子書籍が普及しても、こうした違法スキャン業者はなくならないと個人的に思っている」(東野氏)
そうです。
売ってないからスキャンするんです。
電子書籍で売ってないからわざわざ余計なお金をかけて電子書籍化するんです。
盗むとかは関係ありません。
スキャン代行業者の提訴について考えてみる (その2)に続きます。
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